やまねえの東北応援日記

横浜からいわきに移住して、思ったことをつれづれ書いていきます  (このブログは個人の責任で発信しています。所属団体や紹介団体の意見ではありませんのでご了承ください)

私がいわき経済新聞で双葉郡の記事を書く際の覚悟

横浜市から福島県いわき市に移住して4年。
移住3年目に「いわき経済新聞」の運営をはじめ、はや1年以上。先日、私的記念すべき取材があった。

記事としては、以下の様に本日6/1に公開済みである。

双葉郡富岡町で「わくわくフリマ」 避難解除後の町に日常とにぎわいを(いわき経済新聞)

iwaki.keizai.biz

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(「わくわくフリマinとみおか」の会場となる、福島県双葉郡富岡町の「さくらモールとみおか」駐車場)

何が記念すべきことだったかと言えば、この取材では、取材相手(インタビュイー)も執筆者(ライター)も、両方とも双葉郡出身の女子だったのだ。
自身の地元のことを地元の人が発信する。それは移住者の私がメディアを運営する中でのゴールのひとつだった。だから、とてもうれしかった。


私がいわき経済新聞の運営をすることになったのにはいくつか理由がある。
元々いわき経済新聞を運営していたいわきの団体が、運営できなくなってしまったため、いわきに移住していた私に打診があったのだ。 

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 震災後、横浜に居た時に、ヨコハマ経済新聞を運営するNPOにつとめていた私は、みんなの経済新聞ネットワーク(いわき、ヨコハマ他全国・海外160以上の地域の経済新聞)のやり方と発信力を知っていた。そして、このいわきで、発信したいこと、届けたいことが沢山あった。

「私にやらせてください」

地元に協力者を得ようと、いわきのまちづくりNPO「TATAKIAGE Japan」に地元メディアとしての力をプレゼン。彼らを連れてみんなの経済新聞ネットワーク本部である、シブヤ経済新聞編集部に行き、この人たちと一緒にいわき経済新聞やりますと伝えたのが、2016年夏のことだった。

 

その時に、本部にお願いしたことが、「いわき経済新聞の中で、双葉郡の記事も書かせてほしい」ということ。
いわき市双葉郡はつながっているだけでなく、2018年のいまでも、約2万人の双葉郡の住民がいわき市に避難している。いわきで発信される情報の中に、双葉郡の情報が入ってくるのはごく自然なことだと。

みんなの経済新聞ネットワークでは、「広域〇〇圏」という言い方をしており、例えば町田経済新聞では隣の相模原市のネタも扱う。というわけで「広域いわき圏」のネタを扱ういわき経済新聞で、双葉郡の記事を書くことは、あっさり許可されたのだが、まずここを確保することは私の大きなこだわりであった。


私自身がいわき市に移住したきっかけは、2014年に、福島第1原発が立地する双葉町の復興支援員となったことだった。

双葉町の方は、今でも約7000人の町民すべてが全国に避難している。その中で一番多くの方が避難しているのがいわき市なので、私もいわき市に配属された。

 

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いわき市内の双葉町仮設住宅に準備される、双葉町の新春恒例イベント「ダルマ市」に使う巨大ダルマ引き)

 

私は、いわき市に移住してきたものの、はじめの1年半は、避難している双葉町の人たちの話を聞き、双葉町の業務をしていたので、実はいわきのことをよく知る余裕が無かった。その代わり、双葉町をはじめとする双葉郡の情報は次から次に入ってくる状況だった。

 

双葉町復興支援員の任期を終え、いわき市中心部で働くようになってから、いわきの面白い人や活動に出会い、友人も増え、いわきのこともだんだんわかってくる中で、この地域(いわき市双葉郡)のこと、発信したい!という想いが募っていった。

 

ただ、被災地にありがちな「よそ者が勝手にやっている」という活動はしたくなかった。だから、市内で開催される興味のあるイベントには積極的に参加し、誘われる飲み会にはほぼ参加し、地域の人が本当に望んでいるか、私のしたいことにニーズがあるか、丁寧にお話を聞かせてもらっていた。(と言っても、単純にイベントや飲み会を、その場に暮らす人間として楽しんでいた訳なのだけど)

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(今年も全国新酒鑑評会で金賞を受賞した、いわきの地酒「又兵衛」)

 

そんな風に、2年間くらいは構想をあたためていた中での、いわき経済新聞運営の打診。

「それは外から来たまいちゃんにしか出来ないよ」
「私の地元を好きになってくれて、外に発信しようとしてくれることがうれしい」

友人たちに言ってもらえたことが、実は一番の動機になったのだ。

 

いわき経済新聞には、記事化するにあたり、明確なモットーがある。それは「いわきと双葉のハッピーニュースを届けます」。

 

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双葉郡でのお気に入り場所のひとつ、川内村の「カフェ アメィゾン」)

 

福島と首都圏を行ったり来たりする機会が、ほかの福島県民より多い私は、福島県外に流れるニュースが、ネガなことばかりだったり、震災当時からアップデートされていなかったりするのを、常に感じている。

 

だから、いわき経済新聞では、いわきと双葉の前向きでハッピーなニュースだけを扱う。いわき市双葉郡をはじめとする、福島県浜通り地域に興味を持って検索した人たちに、少しでもいま、この地で前向きに生きている人たちの想いや活動が届くようにと。そして最終目標は、移住者の私ではなく、地元の人が中心となって運営して行けるようにと。

※そんな想いを、昨年取材いただきました
東日本大震災 被災地から いわきの活力を発信 移住しサイト編集長に(毎日新聞

mainichi.jp

 

そんな気持ちで運営しているいわき経済新聞だが、どうしても避けられない嫌なことがある。特に双葉郡の記事を公開したとき、それがYahoo!ニュースに転載されると、コメント欄に心ないことを書く人が結構な割合でいることだ。

news.yahoo.co.jp

※見出しの最後に(みんなの経済新聞ネットワーク)とあるのが、いわき経済新聞の記事です

 

ニュースのコメント欄なんて、大体コピーペーストされた戯言で、読む価値もないものだと、気にするだけ無駄だということはわかっている。でも運営を始めた当初は、私がこの記事を発信しなければ、この地域の人がこんな言われをすることはなかったと気に病んだりもしてしまっていた。私の発信した記事で、地域の人が傷つくようなことがあるなら、発信しない方がマシだと。

 

取材を申し込むとき・お話しするとき・記事を書くときの言葉選び、内容の確認、発信するタイミング、全てに魂削るほど気をつけて発信しても、なにかの拍子で傷つけてしまうことはあるのに、「双葉」という単語だけで脊髄反射的に何か発してしまう残念な人がまだまだいる。

それでも私が発信をやめないのは、本当のことが届いてほしいから。特に遠く離れたところに避難している人たち、故郷を思っている人たちに。そしてもちろん、この地域に関心を持ってくれてる人たちに。

※たとえばこの記事は、双葉郡の桜の名所「夜ノ森」にいまだ立ち入りができないと思っている、首都圏在住の富岡町出身の人たちがいると知って書いた記事です。

双葉郡富岡町夜ノ森の桜、今年もライトアップ 8年ぶりの桜まつりも (いわき経済新聞)

iwaki.keizai.biz

 

まだまだ私の言葉やスキルが足りないことはわかっている。相手を傷つけたくない、自分も傷つきたくないから、取材しながらも深く入り込めないこともある。
でも、大好きな人がたくさんいる、福島県浜通り地域のことを、暮らしながら発信し続けていく、覚悟だけは持っているつもりです。

私が地域の人になるのか、地域の人がいわき経済新聞を運営するのか。両方が叶えば、すごくうれしいことだなと思っているところです。

 

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双葉郡楢葉町、天神岬をのぞむ)