やまねえの東北応援日記

横浜からいわきに移住して、思ったことをつれづれ書いていきます  (このブログは個人の責任で発信しています。所属団体や紹介団体の意見ではありませんのでご了承ください)

私が柳美里さんの本屋「フルハウス」を手伝うことになった理由

 

偶然と縁がこれだけ重なると、必然だったのかも知れないと思う。

芥川賞作家の柳美里さんが、福島県南相馬市小高区の自宅をリノベーションして、2018年4月9日に開店した本屋「フルハウス」の、主にイベント運営のお手伝いをしています。

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最初のきっかけは、私が2016年に受講していた「ふくしま復興塾」の代表をしている加藤博敏さんの呼び掛けだった。曰く、「芥川賞作家の柳美里南相馬市に本屋と劇場をつくろうとしている。著名な人が多く関わる一大プロジェクトになる。クリスマスイブにキックオフイベントが開催されるので手伝いを募集する。関わって絶対損はない」(要約するとこんな感じ。とにかく熱いメッセージがFBグループに投稿された)

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中学生の頃、小説家になりたかったとか、中学高校は演劇部だったとか、なにより福島県浜通りで新しく始まるプロジェクトのキックオフイベントということで、とても興味はあったけど、私には実はそのクリスマスイブには、既に予定があった。25年来ファンであるaccess新潟県の苗場でライブを行う、そこに友人たちと申込済みだったのだ。

「当日は手伝えないけど、その後でも何かできることがあれば手伝わせてください」想いだけは書き込んでおいた。

 

その後少し経って、横浜時代の友人で、元NHK横浜放送局のキャスターの、船本由佳さんのFB投稿が目に留まった。「横浜放送局の先輩で、今は福島放送局にいる吾妻謙アナウンサーが、NHKラジオ深夜便を担当するので是非聴いて欲しい」と。後から聞いてみたら、その投稿は公開投稿ではあったけど、福島に移住している私を意識して書いてくれたとのことだった。しっかり届いたことも、偶然ではなかったのかも知れない。

 

そのラジオ深夜便で、柳美里さんが書き下ろした「窓の外の結婚式」というラジオドラマが流れた。吾妻キャスターを始めとするNHKキャスターに当て書きをした、柳美里さんにとっては随分と久しぶりの戯曲執筆だったという。

その戯曲は、南相馬市で家族を津波で流された妙齢の女性と、その女性と再婚した県外出身の男性の、モノローグと会話で構成されていた。

再婚して夫婦になってはいたが、女性はまだ津波で流された伴侶や家族のことをずっと胸に抱えており、男性もそのことをわかっているから、触れずに、でもなんとか支えようとして暮らしている。物語の最後は、それでもお互いを認め合いながら散歩に出かけていく、というように締めくくられていたように記憶している。

その物語は、南相馬市臨時災害放送局南相馬ひばりFM」(2018年3月31日で閉局)で週に1回パーソナリティを務め、南相馬市やこの地に関わる人の話に真摯に耳を傾けてきた、そして鎌倉市の自宅を売却して南相馬市に移住してまで、この地の人々のことを知ろうとし続けてきた柳美里さんだからこそ書けた、リアルなものだと感じて聴き入ってしまった。

 

私が柳美里さんを意識したもう一つの出来事は、私が福島県いわき市で2015年から運営として参加している対話の場「未来会議」で、柳美里さんをゲストに招いた時のことだった。思えばその時も、私はイベント司会をしていたのだが、「それぞれのふるさと」というテーマで、移住者である柳美里さんと地元いわき市勿来在住の室井潤さんをゲストにトークを展開してもらった。その時にも、柳美里さんの、福島県浜通りに対する真摯な姿勢や鋭い洞察、そして愛情を感じて、この人著名人なのに、いやだからこそすごいな、って思っていた。

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そんなことが続いて、やっぱり私、クリスマスイブの柳美里さんのイベント手伝いたい、って気持ちが募っていった。

 

でも友人との約束のライブもある、しかも結構高額なチケット代と宿泊代も交通費も支払い済みだ。くだらない悩みだと思う人もいようが、ライブが生き甲斐の私にとってはいたって真剣な悩みである。

そんな中ライブのチケットが届いた。12/23と24の2DAYS、その内の24日、つまりクリスマスイブの席が、いわゆる「神席」(前から数列目のセンターブロック)だった。これなら譲渡できる!友人には平謝りし、ファンに円滑に譲渡し、きちんと資金は取り返した上で、私はクリスマスイブのイベントに参加できることになった。

 

前日の晩にはしっかりライブを楽しんだ後、クリスマスイブの早朝5時に新潟県の苗場を出て南相馬市小高区に向かう。新幹線を2つ乗り継ぎ、仙台からJR常磐線福島県に南下する。その時間、6時間!しかもその日は強風だか大雪で、軒並み新幹線が運休したり、大幅に遅れていたりした。「せっかくライブ返上で来たけど、間に合わないかも知れない。まぁそうだったらきっとこのプロジェクトには縁がないんだな」そう思って、駅員さんに聞いてみた。「この切符で小高まで最短で行こうとしたらどうすればいいですか?」駅員さんの返事は、「あ、その新幹線だけ、時間通りに動いてます。そのまま乗車してください」だった。マジか!

 

かくして時間通り、お昼前には小高駅に降り立つことが出来た。

プロの仕事で、柳美里さんの自宅倉庫は、既に「劇場」になっていた。

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客入れをする前に、レンタルで入れた100脚以上の椅子を拭いたり、見えやすいように並べ替えたり、導線を作ったり、掃除したり、やることはいろいろあったが、横浜時代からイベント運営だけは数をこなして来たから、裏方がやるべきことはすぐにわかる。黙々とこなしながら、ひと段落したところでちょっと休憩して来ますーと、同じふくしま復興塾から駆り出されたメンバーと小高駅前の移動コーヒースタンド「オムスビ」で一休みしていたところに着信。このイベントに声掛けした、ふくしま復興塾代表の加藤さんだった。「山根、お前総合司会、やれ。」「え?え、今日のですか?」「出来るだろ、すぐ戻って来い」確かに私は、ふくしま復興塾の年に一回の発表会で司会をさせて欲しいと加藤さんに頼んではいたが、今日みたいな一大イベント、私でいいのか?と思ったのは一瞬。「はい、わかりました。やります。すぐ戻ります!」こんなチャンス、逃すわけないじゃない。

 

渡されたのは進行表というよりタイムテーブル。最低限観客の皆さんに伝えなきゃならないこと(トイレの場所、撮影・飲食の可否、マスコミ対応etc)、出演者の名前の読み方、どこで柳美里さんに振るのか、その場で疑問に思ったことは全部リストアップして聞いた。柳美里さんは、「基本的に山根さんにお任せするので」と一任してくださったのでとてもやりやすかったし、演出や照明の責任者である、海藤春樹さんが横についてサポートしてくれたこともあり、楽しみながら進行が出来、ステージの横の一番近いところから全ての演目を観ることができ、役得とすら感じました。

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(そしてこれも偶然か必然か、この日のメイン、柳美里さん作「ねこのおうち」の朗読劇のキャストも吾妻キャスターだったのです)

 

なんとかつつがなく(でも一部お名前間違いあって申し訳なく思っております)、当日無茶振り司会がこなせたのは、もちろん私が司会業を、横浜時代から、そしていわきに来てからも何回も経験させてもらっていたからに他ならないのだけど、その私の度胸と進行を柳美里さんが気に入ってくださったようで、今後も手伝って欲しいとお声かけいただいたのでした。沢山の人とのつながりからいただいた依頼、断る理由は何も無いです。

 

クリスマスイブに、まずは劇場のプレオープニングイベントを行いましたが、先にオープンするのは本屋さんの方だと決まっていました。そのオープン日は4月。クリスマスイブの段階では、まだその場は手つかずでした。大丈夫かなー?と思いながらも、年明けになると、福島県内の地方紙や東北地方のブロック紙などで、どうやら本屋の準備は着々と進んでいるらしいということは伝わって来ていました。

 

そんな3月中旬に、柳美里さんから連絡がありました。本屋のオープンが4/9(月)に決まったので、直前準備と、またセレモニーの司会をお願いしたいと。もちろんその場で有給申請しましたよね。

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実は私は、新卒で入った会社がドン・キホーテで、2軒店舗の立ち上げに関わっていました。だから開店前のバタバタと、そして開店の時期にしか味わえない、ゼロからお店を生み出す、なんとも言えない充実感を、身を以て知っています。なので、オールボランティアであっても、喜んで手伝いたいと心から思ったのです。

 

しかし、それにはどう考えても人手が足りない。今でもですが、本屋フルハウスは、柳美里さんと伴侶の柳朝晴さんと2人だけで運営しています。ボランティアを募るにも、私が広域に声かけしても効果は薄いだろう…と、ふくしま復興塾の代表加藤さんに頼んで声かけしてもらったり、気心の知れている仲間たちに一本釣りでお願いしたりして、信頼できるボランティアだけを集め、開店準備と当日に臨みました。

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(他にもボランティアしてくれた仲間がいるんだけど、写真が無くてごめんなさい…)

 

なぜ私がそこまでするのか。これは私の個人的な経験からする想像ですが、いくら柳美里さんが著名な作家だとは言え、震災後に移住してまだ数年。おそらく気軽に頼める近所の人は多くは無いのだろうということや、やはり本業は作家であるので、いい意味でも悪い意味でも、純粋で浮世離れした部分があるのを感じて、放っておけないと感じてしまったこともありました。(なんとも僭越な話ですが…。やっぱり天才には天才の仕事があり、それをサポートするのが凡才の役目だと思うのです)

あとは何より、私自身がこの、福島県浜通りの、津波原発事故で沢山の人が離れざるを得なかったこの場所に、本屋と劇場をつくるというプロジェクトに可能性を感じ、応援したい、絶対潰したくないと心から思っているからです。

 

そして、まぁもちろんいろんなバタバタはすごく沢山ありましたが、無事にオープンし、本日まで定休日以外は休みなく、沢山のお客様に来ていただけているようです。(平日は私も本業の仕事があるので行けません)

 

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(開店のあいさつをする柳美里さんと、このお家のオーナーのお孫さん中島穂高くん)

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そして今の私は、毎週土曜日にフルハウスで開催されているイベントに、毎回司会としてお手伝いをさせてもらっています。

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(4/28(土)芥川賞作家・中村文則さんをゲストに迎えて)

 

それからオマケとして、フルハウスのFBページの中の人も。

f:id:maikoyamane:20180505025748j:imagehttps://www.facebook.com/yumiribookstore/

これも、横浜時代から何件ものFBページの管理人をやって来たので、私にとっては苦にならずに出来ることなのです。特に柳美里さんはツイッター民で、FBにはなかなか情報が流れないのでちょうどいいんです。

 

まぁ、非常に長くなりましたが、こんな経緯でお手伝いしてますってことを、私的にも残しておきたくて書いてみました。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

ぜひ、フルハウスに足を運んで、本買ってください!いくらよいプロジェクトでも、売り上げが無かったら続けられないので。(急に現実的な話になりますが、ホントここは肝なので…)

本のセレクトショップというのがぴったりな、柳美里さんと柳美里さんの友人たちが選書した本だけが蔵書されてるラインナップは、とても素敵なので、南相馬市まで来る価値はあるんじゃないかなと思います。

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柳美里さんの本は、全て直筆サイン入りです)

 

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ご来店、お待ちしております!